【北京=西見由章】トランプ米大統領が中国の習近平国家主席に元宵節を祝う書簡を送ったことについて、中国外務省の陸慷報道官は9日の記者会見で「高く称賛する。中国側は中・米関係の発展を非常に重視している」と語った。トランプ氏から「緊張緩和のメッセージ」が直接届くのを心待ちにしていた中国側には一定の安堵(あんど)感も漂う。
中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報(電子版)は9日、書簡について「米政府が中国に向けて発した善意のシグナルだと広く受け止められている」と好意的に言及。トランプ氏の就任後、主要国の中で中国の指導者とだけ連絡がなかったとした上で「中国人に送った『遅めの新年のあいさつ』は人々の期待を満足させた」と評価した。
政府高官に対中強硬派を多く起用し、その代表格であるマティス米国防長官が日韓両国を訪問し同盟関係を再確認するなどトランプ政権の外交姿勢が徐々に明らかになる中で、包囲網を警戒する中国は相次いで米国にシグナルを送った。
中国の王毅外相は7日、訪問先のオーストラリアでの記者会見で「米中が衝突すれば共倒れだ」と牽制(けんせい)。さらに中国国営中央テレビは親中派のキッシンジャー元米国務長官をインタビューに引っ張り出し「米中は互いを潜在的な敵対者ではなくパートナーと考えることが重要だ」と語らせた。
マティス氏の日韓訪問について、中国メディアは米国が同盟国に「鎮静剤」を与えたと論評したが、皮肉なことに中国こそが米国からの「鎮静剤」を切望していた。