早稲田大大学院教授で第一線の刑法学者として知られる山口厚氏(63)が、最高裁判事に就任した。約40年に及ぶ研究者生活を経て、最高裁判事への転身。「研究者としてのこだわりを持って、自分なりに筋が通った結論を出せるように考えていきたい」と話す。
表紙の色から「山口青本」と呼ばれる刑法の体系書は、多くの大学で教科書として使われ、法学部生になじみの深い一冊だ。
父は警視庁の警察官。東大で現行の刑事訴訟法の生みの親として知られる団藤重光氏の授業に触れ、「人間の在り方と理論、両面を持つ興味深い分野」と刑法の面白さに目覚めた。
大学3年で司法試験に合格し、その後の道を決めたのは4年の時。「研究者になってみる気はないか」。師事していた刑法の権威、平野龍一氏から助手として残ることを打診された。
取り調べの録音・録画(可視化)の制度化や性犯罪の法定刑引き上げなど、立法議論にも加わってきた。昨年8月には「活動の幅を広げたい」と弁護士登録。刑事事件の弁護人として法廷にも立った。
この3年間で「青本」を含む自著3冊を改訂した。自身を「自説にこだわらない」と評するように、改訂のたびに内容が変わり、読者を驚かせることも。「最善の考え方でなかったという結論に到達すれば、それまでの私自身が至らなかったということ。よりよい理論を構築しようという姿勢でやってきた」と話す。