主張

検索削除判断 表現の自由には重責伴う

 過去の逮捕歴に関する記事をインターネットの検索サイトから削除するよう求めた仮処分申し立てで、最高裁は削除を認めなかった東京高裁の決定を支持した。

 「表現の自由」を重視した妥当な判断である。一方で最高裁は「検索事業者の表現の自由と比較して、プライバシーが優越することが明らかな場合には、検索結果の削除を求めることができる」とする基準を示した。

 削除の可否は個々の事案のケース・バイ・ケースであり、検索事業者の「表現行為」には自由と、これに伴う責任があると認定したものだ。掲載事項が無制限に認められたものではない。

 検索事業者は従来、情報発信者と検索者を機械的につなぐ「媒介者」にすぎず、責任は負わないとの立場をとってきたが、最高裁はこれを否定した。ただグーグルやヤフーなどの検索大手はすでに、削除要請などに対して柔軟に応じる姿勢を示している。今後も検索サイトの運営には、重い責任を負わなくてはならない。

 仮処分を申し立てた男性の逮捕歴は、児童買春の容疑だった。最高裁は「児童買春が児童に対する性的搾取及び性的虐待と位置付けられており、社会的に強い非難の対象とされ、罰則をもって禁止されていることに照らし、今なお公共の利益に関する事項であるといえる」と判断した。罪種で判断を分けることについては異論もあろうが、おおむね社会通念に沿った意見であると評価できる。

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