都市を生きる建築(87)

独自の存在感発揮する「戦後の洋館」…旧大阪市公館から「ザ・ガーデンオリエンタル大阪」に

【都市を生きる建築(87)】独自の存在感発揮する「戦後の洋館」…旧大阪市公館から「ザ・ガーデンオリエンタル大阪」に
【都市を生きる建築(87)】独自の存在感発揮する「戦後の洋館」…旧大阪市公館から「ザ・ガーデンオリエンタル大阪」に
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 旧大阪市公館は1959(昭和34)年に大阪市の迎賓館として建設された。2014(平成26)年から新たに「ザ・ガーデンオリエンタル大阪」として生まれ変わり、レストランや宴会・披露宴会場として活用されている。

 晴れの日にふさわしい佇(ただず)まいだ。正面は堂々としながらも、人を出迎える個人的な雰囲気を備える。ビルのように真四角ではない。外壁が出たり入ったりして豊かな表情を持っている。バルコニーと手すりが抑揚を加え、クリーム色のタイルも邸宅を連想させる。正面に延びる車寄せがピリッとした気分を与える。迎賓館はこうでなくてはいけない。私的な人間関係を育む、公的な施設なのだから。

 これは大阪にはあまり無い種類の建築といえる。1929(昭和4)年に完成した旧総理大臣官邸や各国の大使館といった迎賓施設は、首都である東京に集中している。こうした建築の系譜は、明治以降に建てられた皇族や華族の洋館にまで遡(さかのぼ)ることができる。中には現在、ブライダル施設として活用されているものも少なくない。公的な性格と私的な親しみを併せ持った瀟洒(しょうしゃ)な建物は、セレモニー向きなのだ。

 この建物は華族制度も廃止され、決まり切った形を打ち破っていくモダンデザインが常識となった戦後の産物だ。それでも「洋館ウエディング」が似合う風情は裏手からも感じとれる。正面とは違うおおらかな外観に、横に延びるバルコニーが広い芝生の庭と調和している。向き合う面や部屋の性格に合わせ、ふさわしい「顔」をデザインする工夫が、戦前の洋館と共通するのだ。