東日本大震災の津波で被災した岩手、宮城県内の住民の健康調査で、地震や津波で自宅が壊れた男性は、自宅被害がない人に比べメタボリック症候群の割合が高くなる傾向があるとの分析結果を東北大と岩手医大が1日、発表した。自宅が全壊の人で1・29倍、大規模半壊の人では1・26倍、割合が高くなった。東北大は「自宅が壊れた人にメタボの人が多くなるメカニズムを検討していきたい」としている。
震災からの復興事業として被災地の長期健康調査を行う東北大の「東北メディカル・メガバンク機構」の調査の一環。平成25〜27年までに岩手、宮城両県で6万3002人を調査し、結果を分析した。岩手は沿岸部12市町村、内陸部6市町村で計2万5827人、宮城は沿岸部14市町、内陸部17市町村3万7175人。
調査結果によると、内陸部に比べ沿岸部に住む人の方が、メタボリック症候群に該当する割合がやや高かった。男性は沿岸部25・4%、内陸部24・2%となり、女性は沿岸部8・3%、内陸部8・0%だった。1日の身体活動も男女とも沿岸部の方が低かった。特に自宅が全壊・大規模半壊している男性はメタボの割合が高かった。
メンタルヘルス面でも、沿岸部の方が心理的苦痛や不眠の割合が高かった。抑鬱症状を示す人は沿岸部27・8%で、内陸部の24・8%と比べてやや高かった。また、心理的苦痛がある人は内陸部5・7%、沿岸部6・2%、不眠は内陸部21・5%、沿岸部24・3%、心的外傷後ストレス障害(PTSD)は内陸部2・0%、沿岸部3・3%で、いずれも沿岸部が高かった。
調査にあたった東北大学の宝沢篤教授(予防医学・疫学)は「震災によるメンタルストレスの問題、地域のつながりの喪失、活動量の減少、酒量の増加などに基づく、肥満や血圧上昇、血糖上昇がメタボにつながった。宮城県はもともとメタボ率が高いが、震災で助長された。腎不全などの合併症などが引き起こされる危険性がある」と注意を呼びかけている。