▼(1)世界ランキング、東大は39位で中国の北京大より格下…から続く
もともと祖父、世耕弘一が創設した近畿大学に就職するつもりはありませんでした。ホテルマンにあこがれ、平成4(1992)年にホテル事業も展開する近畿日本鉄道(現・近鉄グループホールディングス)に就職しました。系列の米国ホテル勤務を経験し、その後は広報を担当しました。
鉄道広報は、事業関連のニュースをマスコミに伝えるプレスリリースと事故やトラブルの発表などがあります。JR西日本の脱線事故が起きた時期と重なっており、鉄道会社には厳しい目が向けられていました。ひとたび鉄道に事故やトラブルが起きると深夜早朝に関係なく、押しの強い社会部の記者に「早く情報を出せ」と求められ、大変な思いもありました。
ただ、新聞の締め切り時間など相手側の事情を知ると、できる限り間に合うように正確な情報を出すことが大切だと分かりました。マスコミの人たちがどういう意識で記事を書くかや、どういうネタをニュースとして扱うかなどを身近に感じられたことも今の仕事につながっています。
広報は、会社と社会の間に立つ存在ということも痛感しました。トラブルや不祥事であるほど、当事者の部門は「そこまで必要があるのか」と情報を出ししぶるものですが、広報は会社が社会でどうみられるか真っ先に考えます。不都合な情報ほど隠蔽(いんぺい)などすれば後々に企業イメージを大きく損ねることにもなりかねません。そうした観点から必要な情報は、公表するように説得する習慣が身についたと思っています。