近大革命(1)

大学の下克上、関西から起きれば全国にも…日本一の志願者数「V3」 近畿大学広報部長・世耕石弘

インタビューに答える近畿大学の世耕石弘広報部長=近畿大学東大阪キャンパス(志儀駒貴撮影)
インタビューに答える近畿大学の世耕石弘広報部長=近畿大学東大阪キャンパス(志儀駒貴撮影)

 少子化が進み、日本の大学界は生き残りをかけた淘汰(とうた)の時代を迎えています。私は、平成19年に近畿日本鉄道(現・近鉄グループホールディングス)の広報担当から近畿大学の職員に転じ、広報を通して、近大の知名度アップとブランド力の向上に努めてきました。

 おかげさまで、近大は26年度の入試で首都圏以外の大学として初めて志願者数日本一となって以降、28年度まで「V3」を続けています。世界で初めて完全養殖を成し遂げた「近大マグロ」を前面に打ち出すなど広報戦略の成果とよく言っていただきますが、忘れてはならないのは、企業の広報をみても広報力だけで成功した事例はなく、広報すべき高い技術力や商品力があってこそだということです。やはり、長年の研究成果や教育改革など大学の実力があることが広報が力を発揮する前提なのです。

 この10年を振り返ると、近大ブランドの向上という目標の壁になり続けているのは、日本の固定化された大学界の序列です。東大を頂点にした序列の枠で安住しているようにみえます。東大と早稲田、慶應に合格した受験生が早慶を選択することはまずありませんし、逆に早慶が東大から優秀な学生を奪うべく挑むこともありません。このため企業では当たり前の競争がなく、業界地図の変動や新陳代謝もありません。

 ただ、そうしている間に日本の大学の競争力低下が懸念されています。昨年発表された英教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーションの世界大学ランキングで東大は39位。前年の43位からやや順位を上げましたが、アジアでは4位。シンガポール国立大や中国の北京大と清華大に次ぐ位置に甘んじているのです。

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