【ワシントン=加納宏幸】トランプ米大統領が難民・移民の受け入れ停止や凍結などを命ずる大統領令を出し、入国拒否などにより大きな混乱が起きている問題で、トランプ氏は29日、「これはメディアが誤って報じているようなイスラム教徒への入国禁止ではない」とする声明を発表した。テロ対策の一環で実施していると強調することで沈静化を図る狙いがある。
トランプ氏は声明で、「米国が移民国家であることに誇りを持ち、抑圧を逃れた人々に同情を示しているが、それができるのも自国の市民や国境を守れてこそだ」と主張した。
その上で、ビザ(査証)発給が90日間凍結された中東・アフリカの7カ国に関して、オバマ前政権がテロの発生源であるとした国々と同じであると主張。「イスラム教徒が多数を占める他の40カ国以上は大統領令の影響を受けていない」とし、イスラム教徒を狙った措置ではないと強調した。
大統領令をめぐる混乱は29日も続いており、全米各地では空港などで抗議活動が続いた。
ニューヨークなど15州と米首都の司法長官は29日、今回の措置が「米国の根本的な原則である信教の自由」に反し、米憲法に違反するとして非難する共同声明を発表した。州の一部では、大統領令の合憲性について司法の場で争う構えをみせている。
これに関連し、米CNNテレビは、ホワイトハウスがテロ対策の一環として、入国する外国人に対しインターネットの閲覧記録や携帯電話の連絡先の開示を求める案を検討していると報じた。拒否すれば入国が許可されない可能性があるとされるが、検討が開始されたばかりで、実際に導入されるかは不明だという。