予測不能なトランプ米大統領は一体何を言い出すのか。安倍晋三首相はどう切り返すべきか-。28日夜の電話会談を前に、日本政府はあらゆるシナリオを想定して臨んだが、42分間に及んだ会談は、肩すかしなほど和やかな雰囲気となった。
「娘のイバンカはあなたのことを非常に高く評価していたよ。めったに他人をほめない娘なんだが…」
トランプ氏は会談冒頭、こう語った。口調は終始穏やかで、テレビで見せるような挑発的な態度は一切なかった。
安倍首相は昨年11月の米大統領選直後、米ニューヨークでトランプ氏と90分間にわたり会談した。この際、イバンカ氏は、夫のクシュナー氏(現大統領上級顧問)とともに出迎え、会談も一部同席した。トランプ氏がイバンカ氏の話を持ち出したのは、就任前に外国首脳の中でいち早く自らを訪ね、胸襟を開いて会談した安倍首相への謝意の表れだといえよう。
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当初、日本政府は、トランプ氏が電話会談で、貿易不均衡など通商政策に関して前哨戦を仕掛けてくるかもしれないとみていた。
ところが、トランプ氏は自動車など具体的な話には踏み込まなかった。かねて主張してきた在日米軍駐留経費負担増にも一切触れなかった。