そんな本作ですが、ボウイが演じる人間離れした無機質な美しさの異星人の存在感だけで鑑賞に値するとも言えるでしょう。特殊メークがあってもなくても異星人にしか見えないというのはすごいことです。
とはいえ、異星人の彼が地球で酒とテレビの中毒になるなど、文明社会を皮肉る描写も。さらに、彼は地球ではほとんど年を取らないため、懇意にしていた人々が老いるのを横目に、地球でひとり、孤独に生き続ける羽目になるという終盤が心にしみ入ります。
本作での演技が評価され、彼は「戦場のメリークリスマス」(83年)や「ラビリンス/魔王の迷宮」(86年)などに出演し、映画スターとしても成功を収めました。
華やかさの中に哀しさをたたえる本作での彼のたたずまいは今も衝撃的です。(岡田敏一)
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監督: ニコラス・ローグ
原作: ウォルター・テビス
脚本: ポール・メイヤーズバーグ
出演: デヴィッド・ボウイ、 バック・ヘンリー、 リップ・トーン、 キャンディ・クラーク
製作費: 150万ドル(約1億7000万円)
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