湯浅博の世界読解

トランプ大統領は「現状破壊勢力」の先頭に立つ気か 閣僚に対する「聞く耳」次第で将来決まる

ドナルド・トランプ新大統領(70)の米国は、戦後国際秩序の「現状破壊勢力」の先頭に立つつもりなのだろうか。ワシントンから実況中継された大統領就任演説を聞きながら、そんな不安が頭をよぎっていた。

国際社会の破壊勢力といえば、南シナ海を独り占めしようとする中国と、クリミア半島を力で併合したロシアであると考えられてきた。これに対して米国は、多元主義、法の支配、寛容性という自由の理念に基づき、長く国際社会の安定に寄与してきた。

ところが、トランプ新大統領の演説は、この「現状維持勢力」としての米国を返上し、中露を捨ておき自らが破壊勢力の先頭に立つかのような勢いだ。

「きょうから新しいビジョンがこの国を支配する。『米国第一主義』で貿易、税、移民、外交の決定を下す。行動を起こす時がきた」

米国第一主義のスローガンは単独主義、孤立主義に結びつき、経済面では保護主義が台頭してくる。演説では、中国を想定して「外国が私たちの企業を奪い、雇用を壊す」と標的にした。20日発表の基本政策でも「他国が米国をしのぐ軍事力を持つことは許さない」と軍備増強をいう。

これまでの発言からすると当面、中国製品への高関税適用と為替操作国の指定が視野に入ってくる。