綱の名に恥じぬ(下)

新横綱・稀勢の里「あと10年現役で」 体幹強化、限界作らぬ

明治神宮で奉納土俵入りをする新横綱・稀勢の里=27日午後、東京都渋谷区(早坂洋祐撮影)
明治神宮で奉納土俵入りをする新横綱・稀勢の里=27日午後、東京都渋谷区(早坂洋祐撮影)

 なぜ稀勢の里は殻を破れたのか-。一つの転機は平成26年初場所千秋楽にあった。

 右足親指負傷で初休場。デビューから12年、ずっとこだわってきた皆勤が途絶えた。初めてテレビの前で1人幕内の土俵を見つめ「こんな惨めな思いはもう二度としたくない」と自らの胸に誓った。

 だから、何かを変えよう、と思った。目を向けたのは猛稽古の一方で、これまであまり関心を払ってこなかった土俵外のトレーニング。体幹強化だ。

 同年秋から知人の紹介で、さまざまな感覚を刺激して神経や筋肉の働きを高める「PNF」へ通い始めた。以降、東京場所では取組後、連日のように都内の治療院に直行して施術を受ける。初場所13日目、豪栄道に不戦勝した後もそう。地方場所中はトレーナーを務めるPNF理学療法士の国藤茂氏(42)をたびたび呼んだ。

 親指だけでなく、右肩や左膝など、力が入りにくい箇所を、ときに絶叫するほど痛みが走る施術で鍛えなおした。

 稀勢の里は意図を明かす。「おもりをあげる単純な筋トレは簡単に気持ちよくなれるが、俺は本当に相撲で勝てる力を付けたいと思って通っている」と。27年以降は計13場所のうち2桁勝利11度の安定感を生み、初の賜杯に結びついた。

 国藤氏には強く印象に残っている稀勢の里の言葉がある。「あと10年現役を続けたいんだ」。出会ったばかりの頃だった。

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