正論

映画『海賊とよばれた男』の主人公、出光佐三の高き精神的気圏に触れよ 文芸批評家、都留文科大学教授・新保祐司

新保祐司氏
新保祐司氏

 今、話題の映画『海賊とよばれた男』を見た。出光興産の創業者・出光佐三をモデルにした作品だが、大学卒業後40歳過ぎまでこの出光興産というユニークな会社で働いていた私は、特別な感慨をもって鑑賞した。多くの日本人に見ることを勧めたいと思う。

 ≪思想の根底にあった愛国心≫

 出光佐三の同時代には、松下幸之助や本田宗一郎などのカリスマ経営者が幾人もいたが、彼らに比べて佐三が人口に膾炙(かいしゃ)していないのが、私などには不満だった。しかし、その理由が分からないでもなかった。彼らが「名経営者」だとすれば、佐三は何か思想家ともいうべき存在であり、その思想は戦後思潮の中では理解されにくかったからである。

 日本人はどうあるべきか、人間が働くとはどういうことかについて独自の思想を鍛え上げ、その実践として経営があった。よく言い聞かされた言葉には「真に働く姿を顕現して、国家社会に示唆を与える」というものがあった。

 その思想の根底には、深い愛国心があり、ガソリンスタンドのポールには国旗が掲げられていた。新入社員時代、支店勤務の私は、朝礼での国旗掲揚とそれに対する最敬礼の号令をかける担当をしていたものであった。このような「反戦後的」な面がいろいろあり、それがために出光興産は少し変わった会社と思われていたのであろう。

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