対馬の盗難仏像判決

国際条約無視の「反日」世論に迎合した判決 観音寺関係者嘆く「異邦人どころか異世界人」

 仏像は返ってこなかった-。長崎県対馬市の観音寺から盗まれた仏像「観世音菩薩坐像(かんぜおんぼさつざぞう)」を、韓国・大田(テジョン)地裁は、証明しようもない700年前の略奪を根拠に、同国内の浮石寺に引き渡すよう命じた。韓国内の「反日」世論に迎合した司法判断といえ、観音寺の関係者は「盗んだ物を返すという当たり前の理屈すら通じない。異邦人どころか異世界人としか思えない」と嘆いた。(九州総局 中村雅和)

 「想像したくなかったけれど、想像はできていた」

 観音寺の田中節孝・前住職は憤りを超え、やりきれない感情を吐露した。

 ずんぐりとした体形で、優しげな仏像は、長く地域の信仰の対象だった。「集落のみなが、像を待ち望んでいる」。田中氏は平成25年1月に窃盗団が韓国で逮捕され、仏像が回収されて以降、韓国側に返還を求め続けた。

 だが、異世界人との交渉は、進展しなかった。

 韓国・浮石寺が所有権を主張し、25年2月、大田地裁が仏像返還差し止めの仮処分を出した。

 これまでの研究で、観音寺の仏像は1330年ごろ、浮石寺の本尊として造られたと判明している。

 浮石寺側は「14世紀に倭寇に略奪された」と主張する。一方、対馬では李氏朝鮮による仏教弾圧を逃れるため、島に持ち込まれたと伝わる。

会員限定記事会員サービス詳細