産経抄

薬で読み解く事件史 1月24日

 徳川家康は75歳の天寿を全うした。当時としては驚くべき長命を可能にしたのは、医薬に寄せる関心の深さだった。医学の歴史に詳しい作家の山崎光夫さんによると、家康はいくつかの秘薬の復元にも成功している(『薬で読み解く江戸の事件史』東洋経済新報社)。

 ▼なかでも名薬とされた「紫雪(しせつ)」は、17種の生薬を調合した解毒解熱剤である。孫の家光が3歳のとき、原因不明の病にかかり、医師も手の施しようがなかった。見舞いに来た家康が紫雪を処方すると、ようやく回復に向かったという。

 ▼現代では、そんな家康も目を丸くするような革新的な新薬が、次々に誕生している。しかも家康のような権力者でなくても、恩恵にあずかれる。ただ開発には莫大(ばくだい)な費用がかかる分、薬の価格が跳ね上がるのが難点である。たとえば、がん治療薬「オプジーボ」は患者1人あたり年間約3500万円かかるとされ、社会保障費をめぐる議論まで引き起こした。

 ▼高額な薬は、犯罪も誘発する。昨年発覚したC型肝炎治療薬の詐取事件もその一つだった。医療費が無料になる生活保護制度を悪用して、医師から数百万円相当の新薬「ソバルディ」の処方を受け、卸業者に転売する手口である。

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