降り注ぐ太陽光のエネルギーを受けて生物が水と二酸化炭素(CO2)から、糖などの炭水化物と酸素を作り出す光合成。この仕組みを持つ植物や微生物には生命維持に欠かせないエネルギー生産の営みで、動物も植物などを食べることによって恩恵を受け、空気中の酸素の増加など環境保護にも役立っている。ところが、地球上に生命が誕生してから、進化のどの時期に、何が原点になって光合成の仕組みを獲得したのかを示す証拠が不明だった。
そこで、神戸大学の蘆田弘樹准教授と河野卓成学術研究員、横田明穂・奈良先端科学技術大学院大学名誉教授、立命館大学の松村浩由教授らの共同研究グループは、進化の過程で生物が光合成を行うようになる以前に登場したと考えられているメタン生成菌という原始的な微生物が、光合成の一連の仕組みの中でも重要な炭水化物の合成という段階の機能の原型をすでに持っていたことを発見した。光合成がどのようにして生まれたかを知る手がかりになるとともに、光合成の機能を高めて食糧などの増産に結びつける研究にも結び付く。この成果は、英国のオンライン総合科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。
研究グループは、これまで光合成を行わない納豆菌など枯草菌と総称される細菌が、光合成を行う生物のCO2を取り込む機能を担当する「ルビスコ」という酵素の遺伝子とよく似た遺伝子を持つものの、その遺伝子から作られる酵素は、光合成とは別の仕組みの中で使われていることを世界で初めて解明し、米科学誌「サイエンス」に発表している。