人材難…体力面などの支援カギ 中小企業はシニア活用模索 静岡

 県内の有効求人倍率が24年4カ月ぶりに1・4倍台(昨年11月現在)となり、売り手市場が続く雇用環境。人材確保に苦戦する中小企業では、シニア世代の活用を模索する動きが始まっている。豊富な社会人経験を持ち、勤務時間や給与面でも柔軟性の高いシニア世代は魅力的な人材だが、年功序列を前提とした人事制度を採用する企業も多く、シニア世代の雇用のノウハウは乏しいのが実情だ。体力面などで不安を抱えるシニア世代をどう支援していくか、受け入れる企業側にも意識改革が求められている。

 「定年退職を迎えた人に雇用延長をお願いしても、断られてしまうケースがある」

 藤枝市内で19日、市の委託事業として初めて開催された「高年齢者活用支援セミナー」では、市内外の中小企業の経営者ら約20人がシニア世代の雇用について悩みをぶつけ合った。参加した市内の健康関連機器製造業の人事担当者からは、「もう10年以上新卒を採用できていない。現状の人員に長く働いてもらう必要がある」と切実な声も。60歳以上65歳未満の世代については、給与を得ることで老齢厚生年金の支給額が減額されてしまう月28万円の壁も話題に上り、「定年退職後も普通に働ける環境があれば、もっと人材を確保できるのでは」といった意見が交わされた。

 商業施設「オーレ藤枝」の本格オープンなどJR藤枝駅周辺の再開発が進み、昨年には最高路線価で県内最大の伸び率を記録した同市だが、人口構造では他の市町と同様に若年層の流出が目立つ。15歳以上65歳未満の生産年齢人口のうち、20〜24歳は6368人(昨年12月末現在)と最少。一方で、60〜64歳は9836人と40〜44歳、45〜49歳に次いで人口の多い世代となっている。

 そこで市では、満60歳以上の高年齢者らを国の助成期間満了後も引き続き雇用した中小企業を対象に、月額1万円(最高6カ月)の奨励金を交付する独自の取り組みを展開。市産業集積推進課の鈴木圭・労政担当係長は「シニア世代のパワーは地元の中小企業を活性化させるカギ。今後は企業とシニア世代がマッチングできる機会を提供していきたい」と期待を込める。

 セミナーの講師を務めたNPO法人「日本プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー協会」の長崎一朗副理事長は、シニア世代を雇用するメリットとして、社会人としての常識がある▽知識や経験を生かした働き方ができる▽勤務時間や給与面で柔軟性がある-といった点を紹介。その半面、シニア世代には体力面や仕事の能力、職場での人間関係の不安を訴える声が根強いという。

 セミナーに参加した、県内で障害者支援施設を運営する「リカバリー」の坂平一芳代表取締役(55)は「障害者福祉は体力勝負の仕事と敬遠されがちだが、現場では60代、70代の方も活躍している。人生経験の豊富なシニア世代の智恵が必要であることを訴えていきたい」と話した。

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