春闘に向けた経団連の交渉方針で、4年連続で賃金の引き上げに前向きな姿勢が示された。
着実な賃上げを通じて個人消費の活性化を図り、デフレ脱却につなげることが重要である。
それには、定期昇給にとどまらず、賃金水準全体を底上げするベースアップ(ベア)の実施が欠かせない。
経営側はベアに慎重な姿勢を崩さないが、経済再生へ積極的な経営判断を下してもらいたい。
交渉指針は、労使で働き方改革に取り組むことも求めた。長時間労働を是正し、生産性を向上しなければ、継続的に賃上げの原資を生み出すのは難しい。社員の待遇を改善し、収益増も促す建設的な交渉を進めてほしい。
過去3年の春闘では、政府の要請もあって2%を超える賃上げを達成してきた。今回の指針も中期的に収益増が期待できる企業に対し、ボーナスや手当などを含めて賃金水準の引き上げに踏み込むよう呼びかけた。妥当である。
ただ、交渉に大きな影響を与える大手輸出メーカーなどには、4年連続のベアに消極的な声が根強い。米トランプ政権の発足で海外経済の不透明感が増している背景がある。固定費の増加は避けたいとの思惑もあるのだろう。