トランプ大統領始動

「日本第一」主義でいこう 編集局長・乾正人

 いよいよ「トランプ時代」が動き出した。

 8年前、初の黒人大統領誕生とあって「われわれはできる!」と180万人にも及ぶ支持者がワシントンに集結し、議事堂前広場は大いに盛り上がった。今となっては「この国はクリスチャンとイスラム教徒、ユダヤ教徒、ヒンズー教徒、無信仰の人々で成り立っている」と仏教徒を無視した箇所しか私は覚えていないが。

グローバリズムの調整期

 言葉のセンスや抑揚、身ぶり手ぶりと前大統領はトランプ大統領よりはるかに巧みだったが、残念ながら演説だけでは、世界は動かなかった。それに引きかえ、「アメリカ・ファースト(米国第一)」のたった一言で、トランプ大統領はさっそく世界を動かしている。

 有識者といわれる人々の中には、「トランプ氏も就任演説では、むちゃなことは言わないだろう」とみる向きも少なくなかった。

 だが、トランプはトランプである。彼は自身のスタイルを変えれば、政権の求心力なぞ、一夜にして消えてなくなることを誰よりもよく知っている。

 英国のEU完全離脱が現実化しつつあるいま、世界は行き過ぎたグローバリズムの調整期に入った。世界で最も豊かな8人が貧しい36億人分の資産を保有している世界は、明らかに異常だ。同じ金持ちでも「俺たちの気持ちがわかる」と労働者に信じさせたトランプ氏が米大統領になったのは何の不思議もない。

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