都市を生きる建築(86)

「普通のビル」が典型に…最新文化財に登録された「リバーサイドビルディング」

【都市を生きる建築(86)】「普通のビル」が典型に…最新文化財に登録された「リバーサイドビルディング」
【都市を生きる建築(86)】「普通のビル」が典型に…最新文化財に登録された「リバーサイドビルディング」
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 大阪市北区中之島に建つリバーサイドサイドビルディングが、昨年新たに登録有形文化財へ加わることになった。登録有形文化財は竣工(しゅんこう)後50年を経過した建物が対象となるが、近代建築に関して言えば、そのほとんどは戦前に建てられたものだ。リバーサイドビルは1965(昭和40)年の竣工。これまでは1963年に建てられた神戸のポートタワーが最も新しく、大阪に関して言えば、戦後は通天閣(1958年)の1件が登録されるのみだった。つまりリバーサイドビルは、「最新の」文化財ということになる。

 その名の通り土佐堀川に面して建つこのビルは、岸田日出刀(ひでと)によって設計された。岸田は東京大学の教授として、丹下健三といった日本の近代建築史を代表する建築家を世に送り出した教育者であり、自身の作品は多くはないものの、東京大学の安田講堂がよく知られている。大阪では、本連載の第26回で取り上げた北御堂(本願寺津村別院)が岸田の作品だ。

 一見したところ、そんな建築界の大家が設計したようには見えない。その外観はどこにでもありそうな「普通のビル」で、たとえ専門家であっても、これが岸田の作品だと見抜くことは無理だろう。リバーサイドビルに、建築家の個性やオリジナリティーといったものはない。

 しかしどこにもないオンリーワンの建築を設計することだけが、建築家の役割ではない。例えば「普通」を、「典型」と言い換えてみたらどうだろう。装飾を一切排した幾何学的な直方体に、水平に連続する窓を設けただけのシンプルな構成は、岸田のような先駆者が欧米から日本に導入した、モダニズムという新しい建築のあり方を示している。