マーチン・スコセッシ監督に聞く・動画付き

映画「沈黙-サイレンス-」 慈悲と許しを見つめて

 音楽デザインについては、何年も考えていました。初めは三味線や琵琶の音色を使ってみました。しかし、それだと結局は「日本映画の影響を受けた西洋人の解釈」に過ぎない。それに、あの当時、長崎の寒村で三味線の音を聴くことなどまずない、と専門家に聞いたこともあり、やめました。結局、山の音や鳥の声、牢番の足音などの自然音を使うことにしたのです。

 日本人は自然に対するとき、西洋人のように、素晴らしい音楽に酔いしれるような態度を取らない。「われわれは自然の中から生まれ、帰っていく。われわれも自然の一部なのだ」という感覚を持っている。そこにとても感心します。また、散っていく桜にあわれを感じる日本人の死生観にも魅力を感じます。

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