正論

拡大する自民族中心主義 孤立回避へ日本の外交力が試される 学習院大学学長・井上寿一

学習院大学学長・井上寿一氏
学習院大学学長・井上寿一氏

≪米英2つの衝撃≫

 昨年(2016年)の世界は予想をくつがえす2つの大きな衝撃に見舞われた。6月のイギリスの国民投票による欧州連合(EU)離脱と11月のアメリカの大統領選挙におけるトランプ候補の勝利である。2つの衝撃に共通するエスノセントリズム(自民族中心主義)は、対外的には孤立主義に陥りがちであり、グローバリズムに対して保護貿易を主張する。他方で日本は12月に国会が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)関連法案を承認して、自由貿易の拡大を志向している。

 イギリスのEU離脱に始まるヨーロッパの変動は12月のイタリアの国民投票に至る。憲法改正を掲げて敗北したレンツィ首相は辞任した。「反レンツィ」を主導したのはポピュリズム政党「五つ星運動」だった。今年のオランダ、フランス、ドイツの選挙結果が注目される。

 ポピュリズムの広がりはアジア地域にも及ぶ。6月に就任したフィリピンのドゥテルテ大統領がポピュリズム政治家であることはいうまでもない。エスノセントリズム、グローバリズム、ポピュリズム、これら3つのキーワードによって特徴づけられる今日の世界は、戦前昭和の歴史を知る者にとって、既視感がある。

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