「遺伝子組み換えでない」との表示があっても、実際には遺伝子組み換えが含まれているかもしれないことをご存じだろうか。食品表示法(旧JAS法と旧食品衛生法)では、意図しない混入が5%以下ならば「組み換えでない」と表示してもよく、「ない」を選んだ人も食べている可能性がある。消費者庁が今年、遺伝子組み換えの表示制度についての検討会を設置する。現状のあいまいな表示にメスが入るか、注目される。(文化部 平沢裕子)
遺伝子組み換えは1970年代、害虫や病気に強い農作物づくりなどを目指して開発された技術。栽培は、科学的な安全性や環境への影響を確認した上で行われており、大豆やトウモロコシ、ナタネなどさまざまな作物に利用されている。農水省の報告書によると、2015年には世界28カ国で栽培され、栽培面積1位の米国で栽培される大豆やトウモロコシの9割以上が遺伝子組み換えだ。
日本への遺伝子組み換え作物の輸入が始まったのは平成8年。表示制度は5年後の13年4月から始まり、現在は大豆やトウモロコシなど8作物と、それを使った豆腐や納豆など33の加工食品が表示義務の対象だ。といっても、遺伝子組み換えを使っていれば必ず表示しなければいけないわけでなく、組み換えられたDNAやタンパク質が検出可能で、重量に占める割合が「上位3位以内かつ5%以上」の場合、「遺伝子組み換え」や「遺伝子組み換え不分別」と表示する義務がある。ただ、「遺伝子組み換え」と表示がある豆腐や納豆などの加工食品を見たことがない人がほとんどだろう。
一方、よく見かける「遺伝子組み換えでない」は、義務ではなく任意表示。生産から流通まできちんと管理された非遺伝子組み換え作物の場合、5%まで遺伝子組み換えの混入が許され、「遺伝子組み換えでない」と表示してもいいことになっている。遺伝子組み換えと非遺伝子組み換えの両方を栽培する海外では、両者の混入が避けられない。