浪速風

大きい6434人の喪失感

昨日の「夕焼けエッセー」に胸を打たれた。兵庫県篠山市の酒井牧さん(72)の「母への手紙」である。50歳の誕生日にカーディガンを贈ってもらい、神戸の母親にお礼の長電話をした翌朝に阪神大震災が襲った。「如何(いか)ほどの切手を貼れば届くのか母住む国は空のまだ上」が痛切に感じた。

▶犠牲になった6434人には、それぞれ家族がおり、愛する人がいた。かけがえのない命だった。神戸市の式典で遺族を代表して「夢の中でも、たとえ幽霊であっても、会って話を聞いてもらいたいし、相談もしたいです」と亡き妻に語りかけた大鳥居慎司さん(58)の追悼の言葉は、誰しも同じ思いだろう。

▶酒井さんは、開けるのが辛くて箱に入ったままのカーディガンを「今年こそ着てみよう」と書く。吹っ切れたのか…。そうではあるまい。震災から22年の歳月は「もう」ではなく「まだ」ではないか。それほどまでに喪失感は大きいのだ。この悲しみはもう積み重ねたくない。