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奈良県御所市の葛木御(み)歳(とし)神社の境内にあるイタリアンカフェ「みとしの森」が市民や全国の神社好きの交流の場となっている。運営と料理を1人でこなすのは、同神社の女性宮司だ。ひょんな縁から継ぐことになったのは、人の手が入らずにすっかり寂れてしまった神社。再興から神社カフェの開店まで、たった1人で始めたチャレンジは多くの人を巻き込み、進化を続ける。
ぼろぼろの神社
壊れたままの拝殿の階段、板が外れて中が丸見えの摂社、屋根が落ちた社務所-。同神社の宮司、東(うの)川(かわ)優子さん(54)は初めて神社を訪れたとき、その寂れた様子に驚いたという。
同神社は「神代の創祀」とされ、稲の神様「御歳神」をまつる全国の神社の総本社という格式高い神社。だが、当時の宮司は公務員の仕事が主で、跡を継ぐ人もなく、手入れが行き届かない状態が長く続いていた。
東川さんはそれまで、塾経営や家庭教師の仕事に奔走。だが、不景気のあおりで順調だった事業が行き詰まった平成16年春、心身ともに追い詰められた東川さんの足はなぜか、それまでまったく心に留めたこともなかった神社へと向かった。
寂れた雰囲気の漂う参道を抜け、導かれるように境内の奥に入ったときのことはよく覚えている。「神様に『よくきたな』といわれているような、ウェルカムな感じがした。一筋の光に思えました」