日の蔭りの中で

トランプ氏のポピュリズム=「大衆迎合主義」の何が危険なのか 京都大学名誉教授・佐伯啓思

 この20日に正式に米国でトランプ大統領が誕生する。事前にトランプ大統領の誕生を強く危惧し、ヒラリー・クリントン氏の勝利を予測していた大方のマスメディアは、トランプ氏の当選をポピュリズムに帰して納得しようとしている。製造業の失速で職を失った白人労働者層の怒りを巧みに票に結び付けるという戦略が成功したというのである。この場合の、ポピュリズムとは、実際にはできもしない大衆受けする政策を並べ、また大衆の情緒を刺激する文句を並べたてて、大衆の歓心を買うということである。この「大衆迎合主義」は危険だという。

 このことに反対ではないのだが、都合の悪い政治現象をただポピュリズムのレッテルを貼っておしまいにするのでは、本当に大事なことが見えてこない。

 米国でポピュリズムという言葉の歴史的な展開は、1890年代に成立した通称「ポピュリスト・パーティー」、すなわち「人民党」あたりにあるのだろう。西部フロンティア消滅のせいで農産物が安価となって生活が困窮した農民が中心となり、中央のエリートを批判して人民の生活の防衛を訴えた。それが「人民党」である。だから、もともとの「ポピュリズム」とは「大衆迎合」ではなく「人民主義」なのであった。

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