「お帰りー」。夕暮れのホームに、乗客を迎える駅係員、大道むつみさん(65)の元気な声が響く。鹿児島県指宿市のJR山川駅が「日本最南端のJR有人駅」に返り咲いて3カ月が経過する。幼なじみの地元女性3人が「駅員」として働き、活気を取り戻している。
山川駅は、薩摩半島南端近くの海沿いに位置する。1日平均乗降客は375人。JR九州は昨年3月、経営健全化の一環で無人化した。「最南端」を示す標柱はカバーで隠され、駅舎の汚れも目立ち始めた。
市は駅周辺の活気を取り戻そうと、一部業務を担う簡易委託を受けて駅係員を公募した。主婦だった大道さんら3人が昨年10月3日から平日の朝夕、切符販売や駅舎清掃をこなしている。
大道さんは駅に愛着がある。高校時代、山川駅から鹿児島市に片道約3時間かけて通った。「毎朝4時に起きて列車に乗った」と振り返る。利用者からも「安心する」と感謝され、やりがいを感じる。
40年近く主婦をしていたという野道幸子さん(66)は「最初は不安だったけど少しは地域の役に立てているかな」。温泉など地元の名所を観光客に紹介する山口公子さん(66)は「地域を盛り上げるため、笑顔でおもてなししたい」と話した。
3人が飾った花も駅の雰囲気を変えた。高校1年、森岡麗良さん(16)は「最南端が戻りうれしい。毎朝の『頑張ってね』という言葉で元気が出ます」と話した。