主張

トランプ氏会見 保護主義加速を懸念する

 「米国第一」の看板を掲げて乱暴な物言いを繰り返す。トランプ次期米大統領による当選後初めての記者会見に、自らの政策への理解を国内外に求める真摯(しんし)さが見られなかったのは残念だ。

 特に心配されるのは経済である。1週間後には正式就任するというのに、保護主義的な言動を改める変化はみられない。むしろその傾向に拍車がかかっているようにも映る。

 世界の自由貿易を牽引(けんいん)する。そうした米国の責務を果たす気があるのか。全世界の懸念にトランプ氏は明確に答えてほしい。

 会見では、米国に巨額の損失を与える貿易相手国として、中国やメキシコとともに日本を名指しで挙げた。貿易摩擦が深刻化した1980年代から90年代の発想に凝り固まっているかのようだ。

 輸入は損で輸出は得-といった単純な構図で貿易を捉えるのは、明らかに時代錯誤だ。海外からの質の高い製品の流入が、米国民の生活を豊かにしている面をどう考えているのだろう。

 各国経済の相互依存が強まっているのに、そこには目を向けずに貿易上の軋轢(あつれき)が生じていると強調する。それが、米経済に資するとは到底思えない。

 海外に生産拠点を移す企業への強硬姿勢も相変わらずだ。

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