「私の祖父(岸信介元首相)はGHQ(連合国軍総司令部)に戦犯として逮捕され3年間拘置された」
これを聞いたドゥテルテ氏は「わが意を得たり」とばかりに米国批判をまくし立てたが、一段落したところで首相はこう言った。
「だが、日米安保条約を改定したのは私の祖父だ。私心ではなく国民と国益を考えたからだ」。ドゥテルテ氏は神妙な面持ちで聞き入っていたという。
ドゥテルテ氏は会談後、「暴言はやめる」と宣言した。だが、米国批判はその後も絶えず、一方で中国重視の発言が相次いだ。南シナ海問題では中国と対立するが、経済協力を念頭に接近も図るしたたかさだ。
首相が今回、ドゥテルテ氏の地元を訪問したのは、南シナ海問題は東シナ海問題に通底し、日本をめぐる安全保障環境が悪化すれば、日本の対フィリピン支援にも影響することを伝える狙いがあったとされる。
個性的な首脳との信頼関係構築は首相の得意とするところ。20日にはトランプ次期米大統領が就任する。昨年11月の米大統領選当選直後、世界に先駆けて会談した強みもある。首相には悪化した米比関係の「橋渡し役」になることも期待される。
(ダバオ 酒井充)