主張

テロ準備罪 国際連携に成立欠かせぬ

 政府は、今月召集される通常国会に、テロ対策として「共謀罪」の名称を「テロ等組織犯罪準備罪」とし、構成要件も変えた組織犯罪防止法の改正案を提出する。

 共謀罪を盛り込んだ法案は野党などの反対で、これまでに3回廃案となっている。昨年9月の臨時国会でも、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の関連審議を優先させるなどとして、法案提出が見送られた。

 同様の及び腰は、もう許されない。3年後には東京五輪・パラリンピックの開催も控えている。今国会での成立に向け、政府与党は覚悟をもって臨んでほしい。

 中東や欧米、南アジアなどで、テロの脅威は増している。日本人の犠牲者も出ている。国内の施設が標的となることも可能性として想定すべきである。

 国連は2000年、国際社会でテロと対峙(たいじ)するため「国際組織犯罪防止条約」を採択した。各国に共謀罪を設けることを求めて批准の条件とし、すでに180カ国以上が締結しているが、共謀罪を持たない日本は先進7カ国(G7)で唯一、締結に至っていない。

 国際社会がテロの事前情報を得ても受け取ることができない。受け取ってもこれに対処すべき法令がない。情報収集に寄与するための根拠法もない。テロと戦う国際連携の「弱い環(わ)」となっている。それが日本の現状である。

 過去の反対意見には「居酒屋で上司を殴ると相談しただけで処罰されるのか」といった声や、市民運動の弾圧に適用されないかなどの懸念があった。このため改正案の適用対象は従来の「団体」から「組織的犯罪集団」と限定し、構成要件には犯罪の合意に加えて具体的な準備行為を加えている。

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