主張

成人の日 周りを思いやれる大人に

 「成人の日」を迎えた20歳の皆さん、おめでとう。大人としての自覚と責任を胸に刻み、豊かな人生に向けて新たな一歩を踏み出してほしい。

 若い世代を取り巻くさまざまの困難な環境を考えるとき、祝意を込めて希望に満ちた話を申し上げるより、むしろ、どんなに努力しても自分の思うようにはならないことがたくさんあるのだと、厳しい現実を指摘しておいた方が新成人のためにはよいのかもしれない。

 夢を持つな、希望を捨てろというのではない。どうせ無理だと端(はな)から投げ出したのでは、豊かな人生は決して手に入らない。夢や希望を大切にしつつ、同時に、なかなか思うにまかせない世間の冷厳な一面を知ることも、大人には欠かせぬ要件の一つである。

 評論家の福田恆存は、幸福論は本来、幸福を獲得する法でなく、不幸に耐える術を伝授するものだと説いたが、苦境に陥ったときにこそ大人の真価は発揮されよう。世の不条理を嘆くだけでは何も始まらない。現実をしっかりと踏まえた次の一手を探ることが大人の分別というものに違いない。

 酸いも甘いも噛(か)み分けた処世法とはきっと、こうして身についてゆくのだろう。

 大人の要件をいま一つ加えれば、家族ら周りの人々の支えに甘えてきた子供の頃とは違って、有縁無縁の力に感謝し、これからは周りを支える立場になるのだと決意を新たにすることである。

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