直虎を語る

龍潭寺20代住職・武藤宗甫さん/漫画家・江川直美さん

 NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」の放送が8日から始まった。主人公・井伊直虎への思いを、1日付紙面「戦国の世を戦い抜いた直虎」でも話を伺った龍潭寺(りょうたんじ)20代住職の武藤宗甫さん(61)と、直虎の生涯を描いた漫画「女城主 井伊直虎」の作者、江川直美さん(52)に聞いた。

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 ◆龍潭寺20代住職武藤宗甫さん(61) 最大の功績は直政の「大成」

 --龍潭寺と井伊直虎との関わりは

 「当寺は井伊家の菩提寺(ぼだいじ)でもありますが、特に2代住職の南渓和尚が直虎を物心両面から支えていました。江戸時代中期に書かれた『井伊家伝記』には、直虎が出家した際に南渓和尚が『次郎法師』の僧名を与えたことが記されています。気が強く男勝りの気性だった直虎に、井伊家総領に代々伝わる『次郎』の名前を付けたことで、後に直虎が女性領主として活躍するきっかけを作ったともいえます」

 --南渓和尚はどういう場面で直虎を支えたのか

 「井伊一族の長老だった南渓和尚には、直虎の軍師としての側面もありました。直虎が今川家から井伊谷での徳政令の実施を求められたときには、南渓和尚の助言を受けながら2年間引き延ばすことに成功したのではないでしょうか。徳川家康が遠州進出を果たすタイミングなどを見計らいながら、周辺の軍事状況の情報収集をしていたと思います」

 --女性領主としての直虎の働きは

 「直虎の詳しい生年は不明ですが、天下人の織田信長とほぼ同時代を生きた人です。群雄割拠の戦国時代だったこともあり、女性ということで周辺の領主に対しても相当気を張っていたでしょう。かつての許嫁(いいなずけ)の忘れ形見である直政を、後の徳川四天王へと育て上げたことが最大の功績ですね。大河ドラマでは、だだっ子の直政をビシバシとたたき上げる、教育ママとして描かれていると聞いたので楽しみにしています」

 --直虎が大河ドラマの主人公になったことの影響は

 「昨年中は1日で約2千人の参拝客が訪れた日もありました。やはり直虎の生涯には謎が多いので、『少しでも直虎のことが知りたい』という方が大半です。井伊家には初代の共保(ともやす)公以来、千年以上の歴史がありますが、これまでスポットが当たってきたのは大老を務めた直弼(なおすけ)など、彦根藩以降の井伊家でした。大河ドラマを通じて、浜松の井伊家の活躍も多くの方に知っていただきたいですね」

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 ◆漫画家・江川直美さん(52) 魅力的な生き方をした女性

 --井伊直虎を題材とする漫画を作成したきっかけは

 「これまでにも元引佐町教育長の柴田宏祐さんから依頼を受け、井伊家にゆかりのある南北朝時代の宗良親王の漫画を描いたことがありました。大河ドラマ『おんな城主 直虎』の放送開始が決まった後、昨年1月から10月までの間に、英訳本を含めて全5巻の漫画冊子が完成しています。直虎の生涯を描いた『女城主 井伊直虎』のほかに、直虎や許嫁の直親にまつわる伝承が残る伊平・川名・寺野地区についても漫画化しています」

 --漫画化する上で最も苦労した部分は

 「直虎に関する史料が残っていないこともあり、まずどういう格好をしていたのかが分かりませんでした。出家した尼の姿だけではイメージが伝わらないと思い、表紙には長刀を携えた女武将としての直虎を描いています。大河ドラマで直虎を演じる柴咲コウさんに合わせて、きりっとした力強い表情の女性にしました」

 --漫画の反響は

 「1冊100円という価格もあり、これまでに全5巻で計6万5千部ほどの部数が出ています。意外だったのは、直親を扱った第4巻の冊子の売れ行きが好調だったこと。直親役の三浦春馬さんのファンなど、若い世代の方にも人気が出ているようです。直虎関連の土産物品のパッケージにも、イラストを使っていただいています」

 --女性としての直虎の魅力は

 「お家断絶の危機という、本当に後がないところで踏ん張った根性のある女性だと思います。『家のために生きた』というとマイナスの印象を持たれがちですが、直虎は井伊家の犠牲になったのではなく、自ら家を守るために戦った。地方の国人領主で、特に同時代で有名だったわけでもありませんが、現代の目から見てもとても魅力的な生き方をした女性ですね」

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 井伊直虎について県内外の有識者らに語ってもらう「直虎を語る」は今後も随時掲載します。

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