ベテラン記者コラム

ヒラリーと「ガラスの壁」 「ねばねばの床」という新視点 大阪編集局特別記者・石野伸子

 去る者日々に疎し。つい先月までは世界のヒロインだったヒラリー・クリントンの話もめっきり聞かなくなった。人々の口の端に上るのは勝者ドナルド・トランプのことばかり。

 来年になればいやが応でもトランプは話題になってくるだろうから、今のうちならヒラリーを語ってもいいだろう。なぜ彼女は「ガラスの天井」を打ち砕けなかったのか。いやいやそんなことはもう過去の話題。ガラスの天井とともに見えてきた女性をはばむ新たな壁「べとべとの床」。

 問題は天井?、それとも床? 上下を見回しつつ、年忘れといたしましょう。

 グラス・シーリング。「ガラスの天井」。ヒラリーはこの言葉を好んで使ってきた。女性の昇進をはばむ「見えない壁」として1980年代ごろから盛んに使われるようになった言葉で、米国初の女性大統領をめざすヒラリーも、ここぞというときには必ずこの言葉を使ってきた。

 8年前、圧倒的有利といわれた民主党の予備選で彗(すい)星(せい)の如く現れた若きオバマに敗れたときはこう言った。

 「今回はガラスの天井を打ち砕くことができなかったが、そのガラスには予備選で獲得した1800万のヒビが入っている」

 捲土重来(けんどちょうらい)。今回の選挙では大統領候補に正式指名され、「ガラスの天井にこれまでで最も大きなヒビを入れることができた」と自信を示した。

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