「こうした他人の口座を利用するのは違法ではないのか」と尋ねると、両替商は「私は蓄財をしているわけではない。両替だ。何の法も侵していない。警察には一時、拘束されたが、銀行に特別なコネがあるというだけでは、罪に問えないだろう」と強調した。
両替商は、さらに、こう説明した。
「例えば、誰かが説明のつかないカネを100万ルピー持っていたとしよう。やるべきことは、母親とか息子とか、使用人といった信頼できる人物の口座を5つ開くことだけだ。そうすれば、25万ルピー未満にカネを分けることができる。これで捜査対象にはならない。政府のやったことは、全部でたらめだよ」
一方、インドでは各地で、大量の新紙幣が見つかる事件が相次いでいる。当局は12月16日、旧紙幣廃止発表後の税務調査で、約31億6000万ルピー(約55億円)にのぼる現金を押収し、このうち約8億ルピーが旧札廃止後に発行された新紙幣だったと発表した。金地金や宝石を合わせると押収総額は39億3000万ルピー(約68億円)相当で、明らかになった隠蔽(いんぺい)所得は260億ルピー(約450億円)という。
ただ、押収された現金のうち、どれだけが実際に違法と認定されるかは明らかではない。この両替商の場合と同様、すでに返還されたものも少なくないと推測される。