矢板明夫のチャイナ監視台

北京から帰国時に私の給与口座は「資産凍結」された 嫌がらせか、外貨流出阻止か 「改革開放は終わった」

 「振り込みができないなら現金をおろしたい」といったが、それもできなかった。銀行に日本円の現金はなく、事前の申し込みが必要といわれた。「中国では現金の国外持ち出しに制限があり、オーバーした分は空港で没収される」とまでいわれては、ほとんど脅しに聞こえる。

 「私はこれから帰国しなければならない。この口座にあるお金をどう処理すればいいのか」ときいたら「次回、中国に戻るとき、人民元に替えて使うことはできる」とにべもない。仕方なく銀行を後にするしかなかった。

 ふと、かつて取材した共産党老幹部の話が頭をよぎった。以前、鄧小平(1904〜1997)に仕えたこの老幹部によると、改革開放当初、外資誘致に躍起となっていた中国の当局者は、「中国で稼いだお金を海外に持ち出すときに制限しないこと」をまず国際社会に約束した。

 この約束を聞いて安心した外国の企業家たちは中国への投資を決め、その後の高度経済成長を支えた。

 「中国に投資した資金を簡単に持ち出せなくなり、一方通行的な状況になれば、外国からの投資はこれから激減するだろう」。銀行を出た私は、「中国の改革開放はいよいよ終わったかもしれない」と歩きながら考えた。

(外信部編集委員)

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