「予想外」「番狂わせ」の文字がメディアに躍った。英国や米国などで、協調や統合路線、寛容な政策にノーを突きつける民意が示された。いわゆる反既存政治、反グローバリズムの旋風が吹き荒れた一年だった。
一連の民意の勝者に共通するのは、排外的で自国第一の姿勢だ。しかし、各国が自国の利益のみを優先し続ければ、衝突に至ることは歴史が示す通りである。
統合、協調、グローバル化に向かってきた国際社会の結束の乱れは、けっして有益ではない。
≪欧州の将来決める投票≫
今や、世界のどこにいてもテロの恐怖から逃れることはできないし、一国だけで安全を守れる時代でもない。2017年がこの理念を再評価、確認する年となることを望む。
11月の米大統領選では、公職歴のない実業家、ドナルド・トランプ氏が勝利した。イタリアでは憲法改正を国民投票で問うたレンツィ首相が敗れ、辞任した。
事前予想の「ズレ」と併せ、為政者と有権者の乖離(かいり)が民主主義の制度の下で突きつけられた。
激震は英国から始まった。6月の国民投票では欧州連合(EU)離脱派が残留派をわずかに上回って勝利した。かつて多くの移民を受け入れ、その多様さを活力としてきたはずのこの国で、「東欧などからの移民に職を奪われた」とする国民の不満がEU離脱を後押しした。