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玉石混淆の情報から何を選択すべきか? 『大場先生、がん治療の本当の話を教えてください』

『大場先生、がん治療の本当の話を教えてください』大場大著(扶桑社・1400円+税)
『大場先生、がん治療の本当の話を教えてください』大場大著(扶桑社・1400円+税)

 ■敵と正しく向き合うために

 奇跡的な治癒か、ドラマチックな死か。メディアはがんを二元論で「盛る」のが大好きだ。しかし今やがんは誰もが罹(かか)り得る身近な病。多くの人ががんと共存しながら社会生活を送っている。ならばもっと現実に即した誠実な情報を伝えるべきではないのか。

 出版界では近藤誠氏が一大市場を確立した。「がんになったらあきらめるのが第一歩」「がんは放置が一番」。氏の著書は表現の自由を駆使した「作品」であるが、医学書として妄信する読者もいる。だがその結果に対する責任は誰も取ってはくれない。

 がんビジネスが巷(ちまた)に蔓延(まんえん)する中、がんと正しく向き合うため知っておくべきことは何か。本書はそれをまとめたものである。部位別がん手術、抗がん剤や放射線、話題の新薬オプジーボ、先進・先端医療や免疫クリニック、緩和ケア、漢方も取り上げた。近藤言説の誤りも糺(ただ)した。著者は元東大病院肝胆膵外科助教、東京オンコロジークリニック代表の大場大氏。外科医で腫瘍内科医のがん治療のスペシャリストだ。大場氏は言う。「医学の進歩と患者の幸福は必ずしも比例していない。それは医療者と患者、医療者どうしの対話不足も要因の一つ。世の中に間違った情報や医療否定を煽(あお)る本が溢(あふ)れているのも大きな要因でしょう」

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