日本全国には無数の方言がある。ユネスコは、その中でアイヌ、奄美、沖縄、八丈島のみを消滅の危機リストに追加した。筆者は沖縄出身で現在埼玉県に住んでいるが、消滅の危機にあるのは沖縄の方言ではなく埼玉の方言としか思えない。沖縄では様々な伝統芸能が盛んで方言が継承される仕組が整っており、マスメディアでも方言を使うことも少なくないからである。一方、埼玉県では伝統的なお祭りは盛んに行われているが方言を継承する仕組みは全く無い。日常生活で方言を聞くこともなくほぼ消滅しているのではないだろうか?
しかし、ユネスコは埼玉など首都圏ではなく沖縄の方言をリストに載せた。その理由は、方言は絶滅危機言語の対象ではないということと、沖縄の方言は日本語とは異なる独自の言語と判断したからである。国連標準では前述したように沖縄の人々は日本人ではなく先住民族とされている。よって、その言語も日本語ではなく先住民族の言語だと判断したと考えれば整合性が取れている。
平成二四年八月三〇日、沖縄県内のしまくとぅば(=島言葉)を推進する四つの民間団体で「しまくとぅば連絡協議会」が発足された。その設立趣意書には次のような理念が書かれている。「しまくとぅばは独立した言語です。基本的人権の一部である言語権を主張し、しまくとぅばの復興を進めます」。また、目的の二番目には「国連勧告や言語権の理念に基づき、学術機関や行政と連携し、しまくとぅばを教育課程へ取り入れるよう国や県に要請します」と書かれている。
この理念や目的は、国連の先住民族勧告の権利を具体的に推進したものであり、実際に沖縄県に要請活動を行っている。「沖縄がいつから日本の一部か確定的なことを述べるのは困難」という現在の政府の答弁では「沖縄の言語は日本の方言」と主張するのは困難である。中国はこの運動が盛り上がった時に、日本が琉球を不法占拠した根拠として利用するに違いない。