広告大手、電通の新入女性社員が昨年末に過労自殺をした問題で、厚生労働省が違法な長時間残業をさせた労働基準法違反の疑いで、法人としての電通と、女性社員の上司だった幹部社員1人を書類送検した。
これを受け、石井直社長は来月に引責辞任すると表明した。同社は以前にも若手社員が過労自殺をしたほか、長時間労働で何度も是正勧告を受けていた。
横行する違法行為を放置してきたことが、経営トップの辞任に発展した。あらゆる企業が厳しく受け止めるべき事態である。
働く人の心身の健康を損なう過重労働は、なくさなければならない。その背景にあった残業文化を排し、効率的な働き方によって生産性を高めることが必要だ。問われているのは、経営者自らの意識改革である。
送検された電通幹部は、違法な残業をさせたうえ、勤務時間を過少申告させた疑いも持たれている。家宅捜索から1カ月半という早い段階での立件は、悪質性に加え、長時間残業に対する厳格な姿勢を示したものと受け取れる。
違法労働が全社的に広がっていた可能性もあるとみて、役員ら上層部の関与の有無を調べる捜査は継続される。