平成28年、拉致問題は何一つ進展しないまま、むなしく越年する。
来年は、横田めぐみさんが13歳で北朝鮮の工作員に拉致されてから40年となる。拉致被害者家族連絡会の結成から20年の節目の年でもある。
なんと長く辛(つら)い年月だろう。めぐみさんの母、早紀江さんは「ずっと怒っています。よく生きてこられたなと思うほどに」と話した。
娘や息子、肉親の帰りを待ちわびる家族の多くは、高齢とも戦っている。被害者の奪還、帰国に時間的猶予はない。
拉致は、北朝鮮による主権侵害の残酷な国家テロである。非は全面的に北朝鮮にある。それがすべてだ。ただ日本政府は、被害者を取り戻すべく、この1年、どのような努力を続けてきたか。早紀江さんらは、安倍晋三政権にも「真剣勝負」を求めている。
加藤勝信・拉致問題担当相は今月、めぐみさんの友人らでつくる「再会を誓う同級生の会」と面会し、「大臣になって1年余、一人の帰国も実現しておらず申し訳ない」と述べた。だが聞きたいのは、謝罪や諦念の弁ではなく、奪還のための手立てである。
北朝鮮は今年2月、拉致被害者の再調査を約束した「特別調査委員会」を解体すると、一方的に表明した。核実験と長距離弾道ミサイルの発射に対し、日本が独自制裁を強化したことへの対抗措置なのだという。