北陸新幹線の大阪延伸をめぐり、政府・与党が福井県の敦賀から小浜と京都を経由する「小浜・京都」ルートで建設することを決定した。2031年に着工し、46年の完成を目指す。
整備新幹線の建設費は国と地方が2対1で負担するのが原則だが、小浜ルートの2兆円超にのぼる建設財源は確保されていない。JR西日本から切り離される並行在来線の運営主体も未定だ。
与党や地元からは建設の前倒しを求める声が早くも上がっているが、多くの課題を積み残したまま延伸を決めたのは、拙速の印象が拭えない。
北陸新幹線は40年以上前の計画に基づき、その後の高速道路の整備や沿線人口の減少などを考慮していない。地方の高速鉄道網のあり方や費用対効果などを見極めた慎重な議論が欠かせない。
与党の作業部会では、滋賀県米原市で東海道新幹線に接続する米原案と京都府舞鶴市を経由する舞鶴案も検討した。この中で運賃が最も安いうえ、時間短縮の効果が大きく、JR西も支持した小浜-京都ルートで決着した。
国は北海道、九州、北陸の整備新幹線向けに毎年度約755億円を投じているが、北陸向けは未着工の敦賀以西の建設費は確保されていない。このため、札幌の開業後に建設を始めるという。
地元が地域の活性化に向けて新幹線に期待をかけるのは理解できる。だが、小浜ルートでも費用対効果の試算は投入資金をわずかに上回る程度だ。域内の大半がトンネルとなる京都府は、高額の建設費負担に難色を示している。
整備新幹線は、1973年の高度成長期に策定された計画が基本だ。右肩上がりの当時とは異なり、現在は財政状態が悪化し、他の交通手段も充実している。その中で新幹線建設を優先する合理的な理由は見当たらない。
新幹線が開業すると、並行して走る在来線はJRの経営から切り離される仕組みだ。第三セクターなどとして地元が経営を肩代わりするが、運賃が上昇して沿線住民の負担が増える場合もある。
与党には北陸新幹線を前倒し開業させ、四国新幹線や山陰新幹線の新規着工を求める声がある。建設費に財政投融資を活用する案も浮上するなど、建設に前のめりな姿勢ばかりが目立つ。これでは幅広い国民の理解は得られまい。