新潟県糸魚川市の大火は、木造建造物が密集した地域で起こる火災の恐ろしさをまざまざと見せつけた。
22日午前に中心市街地で発生した火事は、強風にあおられて約150棟に延焼した。被害は約4万平方メートルに及び、鎮火までに30時間を要した。
焼け出された人たちの苦痛と不安をできる限り軽くすることを、今は第一に考えたい。
自治体の手厚いサポートはもちろん、近隣住民やボランティアの支え、全国からの善意で、避難所や避難先で新年を迎える被災者を温かく包むことが大切だ。
せめてもの救いは、一人の死者も出なかったことである。日中の火災だったので、状況判断や避難行動がしやすかったこともあるが、住民同士が「声を掛け合って逃げた」ことが、人的被害を防ぐ大きな要因となった。自助、共助、公助の中でも、地域防災の要となるのは「共助」であることを再認識しておきたい。
今回の火災は、悪条件が重なって被害が拡大した。冬に日本海側で起こるフェーン現象、雁木(がんぎ)造りが連なる町並み、入り組んだ細い路地などだ。消防車や消防士の数には限りがあり、消火用水も現場では十分に供給できなかった。市消防本部は「消防力がこの火災に対して小さかった」と認める。
今後も、これらの要因を全て解消するのは不可能だ。しかし、一つ一つの要因を検証し「できること」「必要なこと」を洗い出せば、どこかで延焼を止めることが可能になるのではないか。