森村誠一の原作小説とともに大ヒットした昭和52年公開の映画は、ジョー山中の「ママー ドゥー ユー リメンバー…」の歌声と西条八十の詩の一節「母さん 僕のあの帽子どうしたでしょうね」のフレーズで当時を知る世代に強い記憶を残す。
最初にばらしておくが、映画は原作の重要なモチーフである「霧積温泉」で撮影されていない。
明治17年創業の同温泉唯一の旅館「金湯(きんとう)館」女将(おかみ)、佐藤みどりさん(79)は「当時は電気、電話が通じる前でした。森村先生は何度かいらっしゃいましたが、映画の人が来て撮影するのは難しかったようです」という。自家発電はあったというが、それ以前はランプを灯し、炭をおこして暖をとる宿だった。