映画深層

『幸福のスイッチ』から今年で10年 新人発掘の聖地「田辺・弁慶映画祭」に行ってみた

 ちなみに映検とは、キネマ旬報社が実施している映画検定のことで、その1、2級合格者で構成されるのが映検審査員だ。田辺市内には居酒屋やスナックなどが軒を連ねる「味光路」という飲食街があり、映画祭期間中は夜な夜な、映検審査員や映画ファンに市民、それにゲストの監督や出演者、審査員らが酒を酌み交わして映画談義を繰り広げている。当方も初日は深夜の1時半まで参加したが、地方だからこその熱い議論を目の当たりにした。

 10回目を数え、記念映画として製作した新作「ポエトリーエンジェル」(飯塚俊光監督)のワールドプレミアや歴代グランプリ作品の上映も行われることになっていたが、そろそろ田辺を去らねばならぬ。後ろ髪を引かれつつ、会場を後にした。

 ほかに特別上映作品として、映画祭のきっかけとなった「幸福のスイッチ」が初日の夜に大ホールで披露され、安田真奈監督も駆けつけた。映画祭の参加は2度目という安田監督は、前回よりも観客数が格段に増えていると指摘する。

 映画の撮影のときの結束感と熱気が映画祭という形に変わって、新しいメンバーも入りながら続いている感じがするという安田監督は、こんな言葉で映画祭の明日を語ってくれた。

 「映画は終わらないお祭りだとよく言っているのですが、終わらないための一番のポイントは、参加した人がしんどかったけど楽しかったと思うこと。そう思える関係と盛り上がりの場があれば、お祭りは続いていくし、そんな中で何年かに1回か邦画界をにぎわすような作品が出てくればいい。田辺は新人発掘の聖地である、とじわっと広まるくらいの映画祭になっていったらと思いますね」