身近な組織犯罪の典型とも言うべき存在にまでなってしまった特殊詐欺。被害者に電話をかける「かけ子」や、現金を受け取る「受け子」、携帯電話やアジトを用意する「道具屋」など、役割が細分化されていることで知られる。ところが、それら全てを自前でこなす詐欺師が警視庁に逮捕された。舌先三寸で被害回復を持ちかけ、被害者から新たな被害者へとたどって現金をだまし取る1人特殊詐欺師「劇場ひとり」の手口とは。
(※12月14日にアップされた記事を再掲載しています)
「貸した金が返ってくる」
11月28日、警視庁上野署に、群馬県から上京した70代男性が奇妙な用件で駆け込んできた。
「お金を預かってきたが、詐欺だと思う」
70代男性から事情を聴いた署員は瞬時に詐欺事件と判断。70代男性から現金を受け取るため上野駅で待っていた男を詐欺未遂容疑で現行犯逮捕した。
逮捕されたのは、住所不定、自称無職の本多努容疑者(53)。本多容疑者は上野署の調べに「全部自分1人でやりました」と容疑を認めているという。70代男性は、事情を知らずに協力者に仕立て上げられただけだった。