【北京=西見由章】台湾の蔡英文総統との電話協議に踏み切り、「一つの中国」原則に縛られない考えを示したトランプ次期米大統領に中国の習近平指導部が振り回されている。中国は官製メディアを通じて「武力統一論」を主張し、台湾への圧力を強めているが、米軍との衝突は現実的な選択肢ではない。専門家の間では、米中関係は「対立と緊張」の時代に突入するとの懸念が広がる。
●台湾問題「解決せよ」
「(2022年の)習近平・中国共産党総書記の任期が終わる時期に南シナ海と台湾海峡の問題は一気に解決するのではないか。これこそが中華民族の復興だ」。著名な国際政治学者である金燦栄・中国人民大学教授が9月にインターネット上で発表した文章が今、あらためて中国で注目を集めている。
金氏が描くシナリオはこうだ。20年までに南シナ海のスカボロー礁(中国名・黄岩島)など一連の人工島建設を完成させ、米軍の勢力を同海域から排除。早ければ21年にも台湾に軍事侵攻する。金氏は「個人の考え」と強調しているが、研究者の間では政府の台湾政策を反映した内容と受け取られている。
「蔡政権の任期中に大陸は台湾を武力で統一すべきだ。台湾で自らを中国人だと考える人がだれもいなくなるのを待っていたら、コストはより大きくなる」