重要文化財の京都の町家に暮らした仏文学者の杉本秀太郎さんは「意外に冬の屋内があかるい」と書いていた。「深い軒庇(ひさし)は夏の陽ざしから屋内をかばうが、冬の低い太陽は、庇を切って戸障子にまでよく届く」(「洛中生息」から)。加えて、庭の土蔵の白壁に反射した光が間接照明になる。
▶今日は冬至。一年で最も太陽が低く、昼が短い。「冬至冬なか冬はじめ」で、これからが寒さの本番である。冬至カボチャを食べる風習がよく知られるが、小豆と合わせて「いとこ煮」にする地方もある。別々に、すなわち「追い追い(甥(おい)々)」「めいめい(姪(めい)々)」に煮るのが名前の由来という。
▶柚子湯に入るのは血行を促進し、風邪を予防する効果があるが、元々はみそぎの意味があった。冬至は「一陽来復」とされ、よみがえりの日だから身を清める。京町家ではきっと、傾いた太陽が次第に戻るのが、実感できるのだろう。「いつの間に冬至過ぎたる日射かな」(桂信子)