東京電力福島第1原発事故による避難指示が出るなどした県沿岸部に位置する双葉郡8町村で、大半の医療機関が再開できない状況が続いている。来年3月には、避難区域のうち放射線量の高い帰還困難区域を除く大部分の地域で避難指示が解除される予定だが、住民の生活に不可欠な医療体制は十分に整っておらず、帰還に影響を及ぼすと懸念する声も上がっている。
県地域医療課によると、16日時点で、診療所やクリニックなどは原発事故前の48から13、歯科は26から3にそれぞれ減少。病床数20床以上の病院は事故前に6つあったが、現在は広野町の高野病院だけになった。
避難指示が解除された楢葉町や帰町宣言している広野町では医療機関の再開が進んでいるほか、富岡町や浪江町には町立診療所が開設された。しかし、第1原発が立地する双葉町や大熊町を含め、避難指示が継続している地域では再開の見通しが立っていない。
県は手術や入院など双葉郡内の2次救急医療に対応するため、平成30年4月に富岡町内に病床数30床の「ふたば医療センター(仮称)」を開設するとしている。だが、県担当者は「住民帰還の進展には総合病院だけではなく、診療所やクリニックなどかかりつけの医療機関も必要」と話す。
県は、医療機関の再開に向けた建物の改修費用補助や赤字分の一部補填(ほてん)などを実施しており、今後も国と支援策を検討するとしている。