【日曜に書く】障害は人にあるのではない、環境にあるのだ 論説委員・佐野慎輔 (3/3ページ) - 産経ニュース

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日曜に書く

障害は人にあるのではない、環境にあるのだ 論説委員・佐野慎輔 

環境を整備せよ

 舞台芸術における鑑賞サポートを行う例はほかにもある。しかし、その数は全国的にみても決して多くはない。

 ひとつには予算、コストの面が大きいという。字幕や音声ガイドだけをとっても相応の情報サポート機器が必要となる。

 また、的確な字幕を舞台の動きに合わせて瞬時に提示するためには設備とともに、作業効率の高さ、つまり機器を操る人の技量も求められよう。それだけの人材を育成できるか。

 スタッフの、障害のある人、いや障害そのものへの理解も進めたい。研修や講習にも時間と費用がかかる。簡単にできる話ではないが、自分に置き換えれば、必要性がよくわかる。

 手話のわからない私は、「障害のある人」であった。外国語がわからなければ、ミュージカルも、ただ見えているだけかもしれない。能や狂言、歌舞伎、文楽の詞章がわからない人が少なくない。字幕や音声ガイドは単に、「耳が聞こえない人」「目の見えにくい人」だけのものではない。鈴木さんは指摘する。「障害は人にあるのではなく、環境にあるんです」

 年をとると、耳が遠くなり、歩く動作も鈍くなる。高齢化社会は「障害のある人」を量産する社会だと言い換えてもいい。救ってくれるのは「環境」の整備にほかならない。芝居を見ながら実感した次第である。

佐野慎輔(さの しんすけ)