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美術館の壁に所狭しとストライプが並ぶ。配色はもちろん、線の太さや間隔もさまざまだが、大小のキャンバス同士が響き合い、ストライプが横へ横へとリズミカルにつながってゆくのが目に心地良い。
ストライプの絵画で知られる画家、山田正亮だが、そこだけに注目すると、木を見て森を見ずということになる。戦後まもない時期から半世紀以上にわたり、描き残した作品は5千点を優に超えるという。うち主要作219点で、画業全体を俯瞰(ふかん)する初の包括的回顧展「endless 山田正亮の絵画」がいま、東京国立近代美術館(千代田区)で開かれている。
山田の仕事は大きく3つの時期-3シリーズに分けられる。まずは「Still Life」(昭和23~30年)と呼ばれる静物画のシリーズ。終戦直後、生きる指針を求めるかのように、画家は制作ノートにこう記して自らに課したという。〈描き続けたまえ 絵画との契約である〉
彼にとって絵画は神、それとも悪魔のような存在だったのか。いずれにせよ山田は「契約」を遂行するように、その後の人生を絵画にささげることになる。
静物画を構成する瓶や果物などの要素は、執拗(しつよう)に描かれるうちに徐々に背景に溶けていき、形を失って抽象化されていった。そしてその流れが極まったとき、山田の代表的シリーズ「Work」(昭和31~平成7年)が始動する。